スポンサーリンク

無花粉スギ・ヒノキの苗木への植え替えに反対する理由

(2)「切りもしないスギ・ヒノキ」という不良債権だけが残る

「花粉の少ない苗木(無花粉スギ・ヒノキ)」に植え替えた場合、その植えたスギやヒノキを「誰が伐採するのか?」という点も問題です。

現在の日本で林業が衰退しているのは、国産のスギやヒノキを伐採しても「儲からない」からであり、国内の建材需要の減少がまずあって、人件費の高騰から国産材を伐採するよりも海外から木材を輸入した方が割安であり、海外に輸出しようにも今の為替相場では採算が取れないから、ほうぼうのスギやヒノキの人工林が放置されているのが現状でしょう。

「花粉の少ない苗木」に植え替えるのであれば、まず今あるスギやヒノキをどうやってお金に変えるのか、またこれから植えるスギやヒノキをどのように収益化していくのかという議論は必須です。

しかし、そのような議論をロクにしないまま、「花粉の少ない苗木」に植え替えようとしているわけです。

日本が今後、ニュージーランドやカナダのように木材の輸出国になろうというのであればそれもよいですが、そのためには今の「1ドル105円」前後の為替相場では無理でしょう。もちろん、円安に主導すれば価格の問題は解決しますが、それは現在の産業構造を第二次産業国(または第三次産業国)から第一次産業国へと変えてしまうことになり、それで将来の日本が国として成り立つとは思えません。

また、今後日本は少子化で人口が減り続けることが予想されるわけですから、今あるスギやヒノキの人工林面積は将来の建材需要を見越しても十二分に供給過剰であり、「花粉の少ない苗木」に植え替えたとしても建材として将来伐採する部分はほんの一部にすぎないでしょう。

そうであれば「花粉の少ない苗木」に植え替えた大部分のスギやヒノキの人工林は「切りもしないスギ・ヒノキの人工林」として不良債権化してしまうのは避けられません。

その不良債権を将来の国民に押し付けてしまうことの問題はどのように考えているのでしょうか?

さらに言えば、少子化が進めば労働人口自体減少するわけですから、現在でも「儲からない」林業で働こうとする若者がいないのに、将来の若者に林業への就職を求めるのも無理があります。

今の介護業界のように外国人を受け入れるという手もありますが、少子化で社会福祉もままならない40~50年後の日本に移住を希望し、しかも他の仕事より肉体的に過酷で賃金も低い林業の仕事で働いてくれる酔狂な外国人がいるとは到底思えません。

このような問題を考えず、ただ単に「花粉が少ないから」という理由だけで植え替えを進めることは本当に将来の日本にとって正しい選択と言えるのでしょうか?

「花粉が出ないだけ」の「切りもしないスギ・ヒノキの人工林」を将来の日本国民に「不良債権」として押し付けてその処理を丸投げするのは本当に国の政策として正しいことなのでしょうか?

(3)山の法面工事や砂防ダム、護岸工事の補修費用は将来世代の負担になる

先ほどの(1)でも指摘したように、国内におけるスギやヒノキの人工林で「花粉の少ない苗木(無花粉スギ・ヒノキ)」への植え替え作業を促進する限りにおいて、大雨を起因とする土砂崩れや河川の氾濫等の災害は避けられない問題として今後も毎年のように繰り返されることが予想されます。

そうすると当然、災害の対処療法として崩れた山の斜面にコンクリートを吹き付けて補強したり、土砂崩れが発生しないように砂防ダムを山中に構築したり、川の氾濫が起きないように護岸工事をしたりしなければならなくなりますが、コンクリートの寿命は40~50年と言われていますので、今後発生する災害で復旧のために行った関連土木工事現場は、40~50年後の国民が公共工事としてその補修費用を負担しなければならないことになります。

しかし、先ほども述べたように、今後の日本は少子化に向かいます。人口が減るとなれば常識的に考えて税収も減るわけですが、果たして将来の国民が今後毎年のように発生する災害に起因する土砂崩れ復旧工事現場、河川の氾濫復旧工事現場、砂防ダム等の補修費用を少ない税収で賄うことができるでしょうか?

今でさえ、首都高や河川に掛けられた橋梁の補修工事が追い付かない状況で問題になっていますが、今の時点で公共工事が何とか可能なのは1億2千万人の人口を基礎としたそれなりの税収が見込めるからです。

しかし、8千万から9千万人と予測される将来の日本でそのような広範囲の土木工事の補修費用を負担できるのか考えてみると、常識的に考えれば到底不可能です。

つまり、今あるスギやヒノキの人工林を「花粉の少ない苗木」に植え替えたとしても、スギやヒノキの人工林がそのまま残される限りにおいて、そのスギやヒノキの人工林は「不良債権」として存在するだけでなく、その人工林によって引き起こされる土砂崩れや河川の氾濫といった災害の復旧工事を行ったその現場それ自体もまた「コンクリート造営物」という「負の遺産」として将来の国民の負担になるわけです。

スギやヒノキの人工林によって生じる問題は天然林に戻すことによって簡単に解決する

以上で説明したように、「花粉の少ない苗木(無花粉スギ・ヒノキ)」に植え替えたとしても「スギやヒノキの人工林」がそこに残される限り「花粉以外」の様々な問題は放置される結果となるわけですから、「花粉の少ない苗木」に植え替えることは「スギやヒノキの人工林」に内在する様々な問題の根本的な解決にはなりません。

そればかりか、スギやヒノキの人工林に起因する他の諸問題を放置し後の世代に解決を先送りすることになるわけですから、「花粉の少ない苗木」に植え替えること自体が極めて有害な政策とさえいえます。

では、どうすれば良いか。答えは簡単です。

「花粉の少ないスギ・ヒノキの苗木」に植え替えるのではなく、「その地域の植生に適した雑木の苗木」に植え替えればよいだけです。

今ある「スギやヒノキの人工林」を順次伐採し、カシやシイ、ナラやクヌギ、その他その地域の植生に適した「広葉樹」の雑木に植え替えて、本来その地域に存在していたであろう自然林(天然林)の姿に戻すことができれば、その山は雑木の「根」が地盤の「下」まで深く張り巡らされた「土砂崩れの起きにくい山」に生まれ変わります。

また、スギやヒノキと異なり「腐葉土」も堆積していきますから、それなりの時間がたてば堆積した腐葉土によって天然のダムが形成され「河川の氾濫を引き起こしにくい山」になっていくでしょう。

当然、広葉樹の雑木林が増えるにしたがってサルやシカ、イノシシやクマの食糧事情も好転しますから害獣の被害も減少するでしょうし、腐葉土の栄養分によって漁獲量の好転も望めます。

もちろん、「広葉樹」の出す花粉は「花粉の少ないスギやヒノキ(針葉樹)」よりも相当程度少ないはずですから、花粉症の被害も縮小することは間違いありません。

「花粉の少ないスギやヒノキの苗木」に植え替えるのではなく、「その地域の植生に適した雑木(広葉樹)の苗木」に植え替えてそこにもともとあった自然林(天然林)に戻すだけ。ただそれだけでよいのです。

広葉樹の雑木を植えて天然林(雑木林)に戻してあげれば、土砂崩れや河川の氾濫も最小限に抑えることができますから、土砂災害に起因する山の法面工事や砂防ダム工事、河川の氾濫に起因する護岸工事など土木工事も最小限に抑えることができます。

そうすれば、将来の補修工事にかかる費用もごく限られた範囲で済むでしょう。

なにより、天然林に戻すことによって維持費が一切かからないという点が最大のメリットです。

スギやヒノキの人工林は、定期的に人が入って間伐や枝打ち、下刈をしなければ荒れてしまうため、それが存在するだけでコストが発生します。

しかし、天然林に戻せば、後は自然の生態系が構築されることによって基本的に「放置」することで山の保水機能と地盤強化能力は維持されますから、経済的負担は実質ゼロ円です。

後の世代に「不良債権」や「負の遺産」を押し付けることはないわけですから、ただ単に「その地域の植生に適した雑木の苗」を植えるだけで全ての問題は解決するのです。

※なお、「山は定期的に人が入ってあげないと荒れてしまう」というようなことを言う人がいますが、それは「スギやヒノキの人工林」であったり人が山菜などを採取するのに利用するいわゆる「里山」の話です。
自然の生態系が構築された天然林(自然林)に戻してあげれば、人が入らなくても自然界に住む数千数億の種によって山の自然は再生を繰り返してくれますから、天然林に戻してあげさえすればあとは「放置」しても全く問題ありません。
屋久島や対馬の一部地域に残る原生林などは人の手が入らなくても自然のサイクルによって維持されているわけですから、それと人が入らなければ維持できない人工林や里山を混同しないようにしてください。

必要なのは「無花粉スギ・ヒノキへの植え替え」ではなくスギ・ヒノキの人工林の「仕分け」

スギやヒノキの人工林で今必要なのは、「花粉の少ない苗木(無花粉スギ・ヒノキ)」に植え替えることではなく「元の雑木林(広葉樹の天然林)に戻してあげること」です。

そのためにまずやらなければならないのは、スギやヒノキの人工林を「仕分け」することでしょう。

今後の日本で必要となる建材の大まかな試算を行い、その試算に基づいて「将来のために残すスギ・ヒノキの人工林」と「将来のために残す必要のないスギ・ヒノキの人工林」を選別することが必要です。

できれば、林業の盛んないくつかの都道府県を特区として選定し、その地域に重点的に人工林を残すのが適当と思いますが、それは専門家の意見を聞いて議論すればよいでしょう。

おそらく、「将来的に建材として必要ない」と判断される範囲の人工林が大部分を占めるでしょうから、その部分については随時伐採し「その地域の植生に適した雑木の苗」を植えることで天然林に戻してあげる必要があります。

そうしなければ、先ほど述べたような「不良債権」や「負の遺産」を後の世代に押し付ける結果となってしまい、将来の国民が多大な負担を強いられてしまうことを忘れてはいけません。

だからこそ「花粉の少ないスギ・ヒノキの苗木に植替えるのは反対だ」と言っているのです。

「無花粉スギ・無花粉ヒノキの苗木」に植え替えるのは、これらの議論が終わった後です。

「将来のために残す必要性のあるスギやヒノキの人工林」として認められた部分に限って「無花粉スギ・無花粉ヒノキの苗木」に植え替えれば良いだけなのです。

もっとも、先ほど述べたように、現在あるスギやヒノキの人工林は明らかに供給過剰でその大部分は「将来的に建材として必要ない」と判断されるでしょうから、それをすべて広葉樹の天然林(自然林)に戻すのであれば、飛散する花粉の全体量が大幅に減少する結果、そもそも「(スギ・ヒノキの花粉を原因とする)花粉症」という症状自体が限りなくゼロに近いレベルまで減少するのではないかと思われます。
そうすると、将来のために残す必要のある残りのスギやヒノキの人工林に従来どおり「花粉の多いスギ・ヒノキの苗木」を植えたとしてもスギやヒノキの花粉を主たる原因とする花粉症の被害はそれほど深刻化しないものと思われますので、そもそも「花粉の少ないスギ・ヒノキの苗木」を開発すること自体が無価値(税金の無駄遣い)とも言えます。
なお、「最近はスギ花粉以外の花粉症を発症している人も大勢いるからスギ林を伐採して広葉樹に植え替えても花粉症がなくなるわけじゃないので意味がない」というような主張をする人がいますが、その意見には同意できません。
確かにスギ花粉以外の花粉症を発症している人がいるのも事実でしょうが、スギ花粉を原因とする花粉症に悩まされている人が圧倒的に多いのも事実ですし、大量に飛散するスギ花粉にアレルギー症状を発症することによってスギ花粉以外の花粉症を発症した人もいると聞きますから、スギの人口林を伐採して広葉樹に植え替えて自然林(天然林)に戻す価値はあるはずです。
「スギ林を広葉樹に植え替えてもスギ以外の花粉症はなくならないんだからスギ花粉の原因となるスギ林を放置しても構わない」という理屈が通るのであれば、「電車内のチカンを1人2人逮捕したってチカンする人がいなくなるわけじゃないんだから電車内のチカンは逮捕せずにやりたい放題してもらっても構わない」という理屈も通ってしまうことになりますが、なぜそのおかしさに気づかないのでしょうか?

最後に

ここまで長々とグチを書き連ねてきましたが、最後まで読んでくれた方がどれだけいるでしょうか?

おそらく、この意見に賛成してくれる人はあまりいないのかもしれませんが、賛同してくれる人がいてくれたら幸いです。

もっとも、この意見に賛同してくれる人がどれだけいたとしても日本の人工林が天然林に戻ることはないでしょう。

なぜなら、日本におけるスギやヒノキの人工林は、その存在自体が大きな利権になってしまっているからです。

先ほども述べたように、スギやヒノキの人工林は土砂災害や河川の氾濫の根本的な原因となっているわけですが、これを天然林に戻してしまうと災害が発生しなくなり、復旧工事という名目で公共工事をすることができなくなってしまいます。

そうするとゼネコンや田舎の土建屋さんは困りますし、そこから税収を得ている自治体も困りますし、公共工事でしか雇用を生み出せない政府も困ります。

国や自治体としては定期的に災害が発生し、復旧工事の名の下で公共工事を行わないと雇用も税収も消費も確保できないので、天然林に戻されたら困るわけです。だからいつまでたっても人工林は放置されているのです。

田中角栄の日本列島改造論以来、日本は公共工事による土木工事なしでは成り立たない経済構造になってしまっていますから、国としては毎年災害を起こしてくれる人工林が不可欠なのでしょう。

今回報道されている「花粉の少ない苗木(無花粉スギの苗木)」についても同じです。

「花粉の少ない苗木」を作る業者や研究機関はスギやヒノキの人工林があるからこそ儲け(予算の確保)になりますので、彼らにとってスギやヒノキの人工林は利権ですし、「花粉の少ない苗木」も新たな彼らの”彼らだけ”の利権になるわけです。

林業業者や森林組合も広大なスギやヒノキの人工林があるからこそ間伐や下刈りの仕事で利益を得ることができるわけですし、花粉症薬を作る製薬会社やマスクを作るメーカーもスギやヒノキの人工林があるからこそ莫大な利益を上げることができるわけですから、スギやヒノキの人工林自体が利権であって、その利権が縮小されることになる「天然林への植生回帰」など賛成するはずがありません。

つまるところ、日本の産業構造全体が「スギやヒノキの人工林」という巨大な利権にぶら下がっているわけです。

だから結局、ここで長々とグチったところで「花粉の少ない苗木」への植え替えは今後も更に進められていくことになるのは間違いないのですが、それによってもたらされる帰結はあまりにも愚かすぎます。

【GoogleMapの不具合について(2019年3月30日)】

※グーグルマップの仕様が変更された影響なのか不明ですが、掲載していた登山口までの道順が相当な数の記事で乱れているようです。随時修正していますが数が多すぎて短期間では対応しきれません。登山口までの道順は登山のガイドブック等で十分に再確認していただくようお願いいたします。(※最終更新日が2019年の3月下旬以降の記事はチェック済みですので問題ないと思います)

コラム
スポンサーリンク
スポンサーリンク
この記事を読んだ人にはこんな記事も読まれています。
スポンサーリンク
登山口ねっと!