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山岳保険の選び方(おすすめ遭難保険の比較)

ヘリコプター

遭難した場合に発生する遭難救助や捜索費用。

「俺は体力・技能ともに備わっているから遭難なんてしないさ」
「注意して歩くから道迷いなんてありえないよ」

などと軽い気持ちで山に入っている方も多いのではないでしょうか。

しかし、不注意や過信だけでなく、十分に準備をし注意を怠らなかったとしても起きてしまうのが事故というものです。

ちなみに、私の知り合いは天候が悪化する兆候が見えたため某山小屋から下山しようとしたところ、山小屋の人から「近道があるから教えてあげる」と言われ、その山小屋の人について行ったら山小屋の人共々道に迷い、新聞沙汰になるほどの大捜索が開始されてヘリコプターで救助された経験があるそうです(なお、この時の救助費用は山小屋の過失ということで全額山小屋が負担したそうです)。

こんな感じで、どんなに注意していても起こりうるのが事故(山岳事故)というものです。

当然、山岳事故のレスキュー費用はタダではなく、自己負担が原則です。
時には数百万円を超える費用を負担しなければならないこともあるでしょう。
そんな大金を皆さんは簡単に払えるでしょうか?
よほどの資産家でない限り、数百万円の捻出は厳しいのが現実でしょう。

だからこそ山に入る場合には、事前に保険に入っておくべきなのです。
登山を行うに際して山岳保険に加入するというのは「ゴミは持ち帰る」「石・砂・草木は持ち帰らない」などと同様の山に入るうえでの最低限のマナーといえるのではないでしょうか。

・・・とはいっても、山岳保険もいろいろあってどれがいいのかよくわかりませんよね。

そこで今回は、代表的と思われるいくつかの山岳保険をピックアップし、その保険料なんかを調べてまとめてみたいと思います。

山岳保険の選び方(おすすめ遭難保険の比較)

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(1)日本山岳救助機構合同会社(JRO)

日本山岳救助機構(ジロー)の山岳遭難対策制度

特徴

  • 遭難捜索、救助費用の補てん(上限330円)に特化した会員制の費用分担制度で、その年度に現実に発生した捜索救助費用を全会員で公平に分担するという「事後分担金方式」を取っているのが特徴(「保険」「共済」とはシステムが異なる)。
  • 登山はハイキングなどの軽登山だけでなく、登攀装備を擁する本格登攀やクライミング、アイゼンを装着する雪山、沢登なども対象となる。また、登山だけでなくマウンテンバイクやスキー・スノーボード、山菜取りなど幅広い野外活動も対象となっている。

メリット

  • 事後分担金は実際に支出した費用(実費)から算出されるので保険や共済の場合に比較して費用負担が低額に抑えられる(※保険や共済の場合に法令上義務付けられる保険契約準備金や責任準備金の積立が必要ないため費用負担が低額に抑えられる)。
    ※実際の費用負担額は最初の年に入会金2,000円が必要で、その後は年会費2,000円とその年の事後分担金(2015および2016年度は500円)の合計額となる
    例:2016年に入会していた場合の費用負担額
    2016年……入会金2,000円+年会費2,000円+事後分担金500円=4,500
    2017年以降……年会費2,000円+事後分担金500円前後=2,500円前後

注意点

  • 遭難・捜索・救助費用に特化されているので、入院費用や後遺障害、死亡保険金などの支払いがない。
  • 損害賠償保険もないため落石などで他人に怪我をさせた場合の補償はない。

参考サイト


(2)日本費用補償少額短期保険

レスキュー費用保険(捜索・救助費用保険)

特徴

  • 遭難捜索、救助費用の補てん(上限300円)に特化された保険。
  • 登山だけでなくスキーやスノーボード、渓流釣り、山菜取りなど野外活動全般(海以外)が保険の対象となっている。

メリット

  • 年間保険料5,000円のみの払い込みでOKなので保険料が分かりやすい。
  • 年会費とか入会金などが必要ないので、保険料以外の名目でお金をとられることがない
  • 1年ごとの契約なので「登山しなくなったのに毎年保険料を払い続けていた」というようなことになる心配がない。

注意点

  • 遭難・捜索・救助費用に特化されているので、入院費用や後遺障害、死亡保険金などの支払がない。
  • 1年ごとの契約で自動更新されないので、一生登山し続けていくと決意している人にとっては毎年の契約を忘れないように心掛ける必要がある。
  • 損害賠償保険もないため落石などで他人に怪我をさせた場合の補償はない。

参考サイト


(3)公益社団法人日本山岳協会(JMA)

日本山岳協会の山岳共済会

特徴

  • 日本山岳会山岳共済会が契約者、被保険者が山岳共済会の会員となる団体傷害保険。

メリット

  • 団体加入の保険なので個人で加入する保険に比較して保険料が52%割引になっているらしい。
  • また、団体加入の保険なので個人の保険契約でありがちな年齢制限や疾病履歴の制限がない。
  • 捜索費用や救援者費用だけでなく、死亡・後遺障害の保険金や入院・通院費用の補償も受けられる。
  • 賠償責任保険も含まれるため落石を起こして他人に怪我をさせた場合などにも対応できる。

注意点

  • 保険料の他に山岳共済会の年会費1,000円(18歳未満は500円)が必要。
  • 遭難捜索、救助費用の補てんに限定されるものと比較して費用負担が割高になる。
  • 具体的な保険料は問い合わせしないとわからない。

参考サイト


(4)モンベル

モンベル野外活動保険(傷害総合保険)
モンベル山岳保険(運動危険補償特約付傷害総合保険)
モンベル野遊び保険(国内旅行傷害保険)
モンベル山行保険(運動危険補償特約付国内旅行傷害保険)

特徴

  • 「モンベル野外活動保険(傷害総合保険)」は通常の登山やハイキング・キャンプ・スキーなど、「モンベル山岳保険(運動危険補償特約付傷害総合保険)」はピッケルやアイゼンを使用する本格登攀や山岳スキーが保険の対象となっている。
  • 短期(1日~7日間)の保険契約となる「モンベル野遊び保険(国内旅行傷害保険)」や「モンベル山行保険(運動危険補償特約付国内旅行傷害保険)」がある。
  • モンベルメイトの会員登録が必要。

メリット

  • 「モンベル野外活動保険」の「シングルプランC033」の保険料は3,110円(1年契約)なので、ピッケルやアイゼンを使う本格登攀を行わないのなら、前述の「1」で紹介した「日本山岳救救助機構(JRO)の山岳遭難対策制度」を使うよりも割安かもしれない(※年間の費用負担はモンベルの方が300円ほど高いが、個人賠償責任保険が1億円が附帯し救援者費用も上限が500円となっている。モンベルはモンベルクラブ会員の年会費1,500円が必要となるのでその金額を支払ってもこれらの補償を受けたいかどうかで判断が分かれるところ)。
  • 屋久島の縄文杉登山だけやりたいなど短期間の保険で十分な場合には「モンベル野遊び保険(国内旅行傷害保険)」を使えば年会費や年間保険料の支払いが必要な他の保険に比較してかなり割安になる(※もっとも屋久島の場合は現地のお土産屋さんなどで500円ほどの保険料を支払えば短期の山岳保険に加入することができます)。
  • モンベルメイトが契約者、モンベルメイトの会員が被保険者となっている団体加入の保険なので(短期保険を除く)個人で加入する保険と比較して保険料が割引されているものと思われる。
  • 捜索費用や救援者費用だけでなく、死亡・後遺障害の保険金や入院・通院費用の保証も受けられる。
  • 賠償責任保険も含まれるため落石を起こして他人に怪我をさせたなどの場合にも対応できる。
  • 保険料と補償額の一覧表がモンベルのサイトで公開されているので見積もりをするのが簡単。
  • モンベルポイントの付与がある。

注意点

  • モンベルメイトはモンベルクラブ会員(年会費1,500円)になることが前提条件になっている。
  • 遭難捜索、救助費用の補てんに限定されるものと比較して費用負担が割高になる(「野遊び保険」や「山行保険」など短期の保険は除く)。
  • 短期の保険は契約者が個人となるので年齢制限などがある。
  • 保険料の支払いがクレジットカード一括払いのみしか受け付けていない(なのでクレジットカードがない人は契約できない)。

参考サイト


(5)一般社団法人 山岳寄付基金

やまきふ共済会の山岳保険制度

特徴

  • 遭難時の救援者費用に特化した山岳保険。
  • 年会費の一部が公的な遭難救助活動・遭難防止対策・登山道整備事業などに寄付される。

メリット

  • 一般的な山岳保険における捜索救助費用の補償額は300万円前後が主流だが、山岳寄付基金の場合は500万円まで補償されるため捜索費用が高額になっても安心。
  • 一般的な登山だけでなく、山菜取りやスキー、雪山や登攀を伴う本格的クライミングまで補償の対象となっている(※登山計画書の作成通知が必要)。
  • PCやスマホから入会手続きが可能で入会と同時に保険が適用となるため便利かつ迅速。
  • 年会費4,000円だけで追加費用がないため保険料が分かりやすい。
  • 一年ごとの自動更新のため「うっかり継続し忘れた」というようなことがない。
  • 年会費の一部が公的な遭難救助活動・遭難防止対策・登山道整備事業などに寄付されるため、加入するだけで社会貢献をしている気になれる。

注意点

  • 雪山や本格的な登攀を伴うクライミング・道迷いや疲労・病気による遭難等については、事前に登山計画書の作成通知を行っておかなければ保険の対象とならない(通常の登山や滑落落石などの遭難は登山計画書の作成通知がなくても補償の対象となる)。
    ※「登山計画書の作成通知」とは、登山計画書を作成して警察署などに提出したことを登山前にPCやスマホから山岳寄付基金のサイト上で通知しておくことをいいます。
  • 遭難・捜索・救助費用に特化されているため入院費用や後遺障害、死亡保険金などの支払がない。
  • 損害賠償保険も含まれていないため、落石などで他人に怪我をさせた場合の補償はない。

参考サイト

各山岳保険の比較

各社の山岳保険を比較するとこんな感じになります。

 各社の山岳保険比較表
会社
団体名
保険の名称入会金
(円)
年会費
(円)
年間
保険料

(円)
冬山捜索救助
費用
(円)
死亡
障害

入院
(円)
賠償責任
保険
(円)
JRO
(ジロー)
山岳遭難
対策制度
2,0002,000500
※1

330万
××
日本費用
補償少額

短期保険
レスキュー
費用保険
なしなし5,000
300万
××
日本
山岳協会
山岳共済会なし1,000不明
150万~

1億
モンベルモンベル
野外活動保険
なし1,5003,110
※2
×
500万
※2

1億
※2
モンベル
山岳保険
なし1,5008,190
※3

630万
※3

1億
※3
モンベル
野遊び保険
なし1,500500
※4
×
300万

1億
※4
モンベル
山行保険
なし1,5001,500
※4

350万

1億
※4
山岳寄付基金やまきふ共済会なし4,000なし
※5

500万
××
冬山:アイゼン・ピッケルを使用する本格登攀やクライミングなど
※1:分担金を2016年と同一と仮定した場合 ※2:シングルプランC033の場合
※3:シングルプランF033の場合 ※4:6泊7日の場合
※5:登山計画書の作成通知が必要 ★捜索救助費用と損害賠償保険の金額は上限金額
⚠ この一覧表には未確認情報も含まれます。
正確な保険料等はそれぞれのサイト等で各自ご確認ください。

自動車保険などの特約との重複を避ける

代表的と思われる山岳保険の内容は前述したとおりですので、ご自身の山行スタイルと相談しながら「捜索・救助補償」だけの保険でもよいか、「入院補償」や「後遺障害補償」なども必要か、「対人賠償保険」なども契約しておいた方がよいのか、数日単位の「短期」保険でもよいのかなどを考えながら自分にあった保険に加入するのが良いのではないかと思います。

ただ、最後に一つ気を付けてもらいたいのが、既に契約している生命保険や自動車保険の特約で、登山中の事故についても保険金が支払われるものが附帯していないか確認することを忘れないようにすることです。

たとえば、私(登山口ねっと!の管理人)の場合、バイクに乗ることが多いので自動車保険に加入しているのですが、そのバイク保険の特約の一部に「日常生活傷害補償特約」というものがあり、その特約が付帯した契約の場合には日常生活において身体に被った障害に対しては保険金が支払われることになっています。

この日常生活傷害補償特約は、ピッケルやアイゼンなどの登攀用具を使用する登山やフリークライミング(ロッククライミング)における事故については補償の対象外となっていますが、通常の一般登山道を歩く登山やトレッキング、ハイキングなどの際に怪我をした場合は保険金(死亡保険金・後遺障害保険金・入院保険金・通院手術保険金など)が支払われることになっていますので、冬山や本格的な登攀を伴う登山をしないというのであれば前述の山岳保険のうち「入院補償」や「後遺障害補償」など新たに加入する必要はないことになります。

仮に、登山中(※冬山や本格登攀でなく一般登山道の登山中)に怪我をした場合でも自動車保険の「日常生活保障特約」から「入院補償」や「後遺障害補償」が支払われるので、山岳保険は「捜索・救助費用」に特化されたものであっても問題ないわけです。

このように、生命保険や自動車保険の特約の中には登山中の事故についても保険金が支払われるものがある場合があるので、ご自身が加入している他の保険についても一度確認しておいた方がいいでしょう。

同じ補償を重複してかけておくのも補償が厚くなるので無駄ではありませんが、お金に余裕がない場合は山岳保険の加入前にチェックしておいた方がいいと思います。

あとがき

このページで紹介した山岳保険は、当サイト管理人の独断で選んだものです。このほかにも山岳保険はたくさんあると思いますので、皆さん各自でお調べください。

夏山しかやらないのか、冬山もやるのか、登山以外のスキーなどもやるのか、他人に怪我させた場合の賠償保険も加入するかなど、自分の山行スタイルに合わせて選ぶのが賢明でしょう。

既に生命保険や自動車保険に加入している場合は、それらの保険で登山に使えそうな特約が入っていないか事前に確認し、同じような保険を重複して契約しないようにするのが賢い山岳保険選びだと思います。
(たとえば他人に怪我をさせた場合の損害賠償や自分が怪我をした場合の入院保障などの特約が生命保険や自動車保険の特約に入っていないかなどを確認する。登山時の疾病や事故などにも保険金が支払われるような特約であれば、山岳保険は捜索救助費用に特化されたものでも問題ないように思う・・・これは当サイト管理人の私見です)。

コラム
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