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木製ストローの普及によって森林伐採による環境破壊は進むか

本日、とある企業が木製ストローの開発に成功した旨の報道が行われました。

ホテルが木製ストローを導入|2018年12月11日付け共同通信

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181211-00000058-kyodonews-soci

これは、プラスチック製のストローがマイクロプラスチックなどで環境への影響が大きいことが問題になっていることから、その代替品として開発が進められていたものと考えられます。

今回、この木製ストローが開発されたことによって、今後市場で使用されるストローの多くがこの木製ストローに代替えされていくことも想定されますが、ストローの原材料に「木材」が使用されることから、森林伐採によってかえって環境破壊が進むのではないかとの指摘もされています。

では、この木製ストローを普及させることで実際に森林伐採等の環境破壊が進む可能性はあるのでしょうか。

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木製ストローを使うと日本で森林伐採という環境破壊が生じるか

このように、今回開発された木製ストローでは、かえって国内における環境破壊の問題が生じるのではないかとの指摘もされています。

しかし、今回の木製ストローでは、「森林伐採」という意味での自然破壊は生じないでしょう。

なぜなら、今回の木製ストローでは、その原材料として「間伐材」が使用されていると報道されているからです。

間伐材が何かわからない人もいるかもしれませんので念のため説明すると、植林したスギやヒノキを「間引く」為に伐採した不要な原木のことを言います。

この間伐材は、植林したスギやヒノキの人工林を経営するうえで必ず発生します。スギやヒノキの山では、生育の良い木だけを選別して太く高く育てるために定期的に間伐して不要な木を切り倒さなければならないからです。

伐採した間伐材は何かの材料として使用しない限り、切り倒して山に捨てるしかありませんから、間伐材を何かの製品の原材料にすること自体は森林伐採の問題を生じさせません。

ですから、木製ストローを普及させることによって、日本の山の「森林伐採」という環境破壊問題は生じないと言えます。

むしろ間伐材を使う方が環境破壊になる

もっとも、この木製ストローに間伐材を使うことは、「森林を伐採しない」という意味での環境破壊を生じさせます。

なぜなら、日本におけるスギやヒノキの植えられた森林は、そのほぼすべてが戦後に植林された人工林だからです。

日本の低層地帯の山々にはもともとカシやシイ、ナラやクヌギといった雑木が多く自生していましたが、先の戦時中、燃料不足から薪や木炭が燃料として必要とされたことから全国的に里山から山奥まで広い範囲で伐採が進み、終戦時には日本の山の多くは全く木の生えていない丸坊主の状態になってしまいました。

北朝鮮の農村部の映像が報道されると燃料不足でことごとく切り倒されて荒れ果てた山々が映されることがありますが、あれと同じです。

そうして切り倒されて荒れ果てた山々に、戦後になって「植えよ増やせよ」のスローガンの下で大量に植林されていったのが、今あるスギやヒノキの人工林です。

カシやシイ、ナラやクヌギといった雑木林が広がる自然豊かな山々の木々を切り倒し、その自然豊かな山を破壊し尽くしてその上に人が人の手で植えたものが今のスギやヒノキの人工林なのですから、スギやヒノキの人工林は「自然」なものではなく「人口造営物」に過ぎないのです。

ところで、このスギやヒノキの人工林が自然のものでないことは様々な問題を生じさせています。

たとえばスギ花粉に起因する花粉症の問題や、スギやヒノキなどの針葉樹の根が浅いことに起因する豪雨からの土砂災害、スギやヒノキの葉が脂分が多く腐葉土を作れないことから生じる河川の氾濫の問題や、その腐葉土を作れないことでプランクトンが減少して派生される漁獲量の減少問題、雑木林で食料を調達していたサルやクマ、シカやイノシシなどの野生動物が餌不足から里に下りて畑を荒らしたりするいわゆる獣害などの問題です(※この点は以下のページで詳しく論じています)。

これらの問題はすべてスギやヒノキの人工林がその根本的な原因となっていますから、スギやヒノキの人工林をそのままにしておくこと自体が有害であり自然を破壊している状態と言えます。

そうであれば、間伐材を利用すること自体が自然破壊につながると言えるでしょう。間伐材はスギやヒノキの人工林があってこそ生産できるものだからです。

本当に自然破壊、環境破壊をなくしたいと思うのであれば、今あるスギやヒノキの人工林を順次伐採し、カシやシイ、ナラやクヌギといった雑木の苗木に植え替えて元々そこにあったであろう自然林(雑木林)に戻してあげなければなりません。

間伐材の利用を促進することはスギやヒノキの人工林を放置することに繋がりますから、間伐材を使用すること自体がスギやヒノキの人工林をそのまま放置するという意味での不作為的な自然破壊・環境破壊の問題を惹起させます。

そして、その結果として、スギやヒノキの人工林によって生じる諸問題を将来世代に先送りすることになるのです。

木製ストローを推奨するなら、間伐材ではなくスギやヒノキの原木を切り倒して材料にすべき

ですから、木製ストローを促進しようとするのであれば、間伐材を原材料とするのは日本の森林環境の側面から考えた場合、極めて有害です。

木製ストローを国産材で賄うというのであれば、間伐材ではなく、スギやヒノキの原木を切り倒しその原木そのものを原材料とすべきでしょう。

そして、その切り倒した後の山に、カシやシイ、ナラやクヌギといった雑木の苗木を順次植林し、そこに元々あったであろう自然林に戻す措置をとることが最善の策と言えます。

間伐材を利用すれば、先ほど説明したように、スギやヒノキの人工林によって生じる諸問題の解決を将来世代に先送りさせることになりますから、間伐材の利用はやめるべきです。

原材料の一部でも輸入材を利用するのなら、途上国の森林伐採を招くだけ

もっとも、これはあくまでも木製ストローの原材料をすべて国産材で賄うことが前提条件です。

仮にその原材料となる木材の一部でも海外から輸入するというのであれば、絶対に木製ストローなど推奨すべきではありません。

木製ストローを推奨すればするほど、その原材料を輸入に頼るようになるからです。

木製ストローを推奨させ様々なメーカーが参入するようになればいずれ価格競争になるのは必然ですから、そうなれば当然、費用のかさむ日本の木材よりも海外からの輸入材に頼るようになるでしょう。

途上国では切り倒せばお金になるので、木製ストローが普及すればするほど海外の自然破壊が進んでしまうのは目に見えています。

今回の東京オリンピックでもマレーシアの広大な原生林が伐採され輸入されて問題になっていますから、これは自明の理とも言えます。

日本政府が東京五輪の木材使用でボルネオ島プナン族の生活権を脅かす人権侵害をして森林伐採、世界から14万通の反対署名|マレーシア生活&アジア旅ブログ

http://sekaitabi.com/penanppl.html

ですから、木製ストローの原材料の100%を国産材で賄うことができないというのであれば、木製ストローは推奨すべきではないと言えます。

結論として、木製ストローには現状では反対

ところで、今回の報道では「主に国産の間伐材を使用し…」と記事に記載されており「主に…」と言っているわけですから、その木製ストローの原材料として使用する木材を100%国産で賄うのは今の段階では無理だと考えていることになります。

とすると、このまま木製ストローを普及させる活動を広めても途上国の森林伐採を促進させるだけなのは明らかでしょう。

今年世界中で発生した豪雨災害や洪水被害は世界的な気候変動の影響があることは明らかで、その原因の多くは途上国における熱帯雨林の伐採によるものであることも間違いありません。

そうであれば、「主に国産の間伐材を使用…」しその原材料の一部でも輸入材に頼るという予定で進めている今の状態で木製ストローを普及させるのはあまりにも危険と言えます。

このような事情を考えると、木製ストローの普及については、その原材料を100%国産材で賄い、かつ、その原材料に間伐材を使用せずスギやヒノキの原木を切り倒して使用するというのであれば賛成ですが、その原材料として一部でも輸入材を使用することが前提となっている現状を鑑みれば、個人的には反対と言わざるを得ません。

木製ストローを普及させるというのであれば、その原材料を100%国産材で賄うのはマストです。そして、日本のスギやヒノキの人工林を元々そこにあったであろう自然林(雑木林)の植生に戻す作業とセットで考えなければならないと言えます。

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