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リニアの南アルプストンネルは掘るべきではないと思う理由

私が物心ついた頃からJR東海と国が躍起になって開通を目指しているリニア中央新幹線ですが、いよいよその運行区間の一部である南アルプス地域の工事が始まるらしいです。

一番の難所となるのが南アルプスの地下 1400m を 25kmにも渡って掘り進む、南アルプストンネルだそうです。

ユネスコのエコパークにも選定される南アルプスの下を掘るというのですから、トンネルを掘るうえでのそれなりの調査をしているのでしょうが、本当に問題は無いのでしょうか?

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三沢峠の沢では水涸れが…

まず、こちらの画像を見てください。

どこかお分かりでしょうか?

場所は東京の八王子市、京王線の高尾山口駅から神奈川県との県境にある三沢峠に行く途中の林道沿いを流れる沢です。

ちょうどグリーンセンターの入口手前あたりだと思います。

水の量が少ないと思いませんか?

この日は朝からジャジャ降りの雨でしたので、この規模の谷であればもっと流れていて良いはずなのにご覧のとおりです。

山の規模に反して明らかに水量が少なかったので「やけに水量の少ない沢だな~」と思いながら歩いていたら、ちょうどグリーンセンターの人が歩いてきたので尋ねてみました。

水枯れは、この下を圏央道(首都圏中央連絡自動車道)が通っているのが原因らしいです。

※グーグルマップで見ると三沢峠への林道の西側、グリーンセンターの地下をトンネルが通っているのがわかります

圏央道は

「横浜、厚木、八王子、川越、つくば、成田、木更津などの都市を連絡し、東京湾アクアライン、東京外かく環状道路などと一体となって首都圏の広域的な幹線道路網を形成する首都圏3環状道路の、一番外側に位置する環状道路」

(※国土交通省関東地方整備局のウェブサイトより引用)

引用元URL→http://www.ktr.mlit.go.jp/honkyoku/road/3kanjo/kenoudo/

というものらしく、高尾山の方から三沢峠の下を通って神奈川の方にぶち抜くトンネルが掘られています。

トンネルが掘られる前はこの沢もそれなりの水量があったそうですが、圏央道のトンネルが開通した後はピタリと水が涸れてしまったそうです。

地元の人の話によるとこの下のトンネルでは湧水がすごく出ているらしく、地下にしみ込んだ雨水が山に蓄えられたり川に流れることなくトンネルの方にダイレクトに流れてしまい表面の沢は涸れてしまったそうです。

ちなみに、この林道はグーグルマップのストリートビューでも見ることができますので興味がある人は見てみてください(※以前はグリーンセンターの付近までストリートビューで表示できたのですが、なぜか現在は福寿園前の林道入口までしかストリートビューで表示できなくなってしまいました)。

ストリートビューの方は晴れた日に撮影しているので沢がカラカラに涸れてしまっているのがわかるでしょう。

八王子城址の滝でも水涸れが…

もう一枚写真をご覧ください。

これは、八王子城址の御主殿跡前にある「御主殿の滝」です。

写真の撮り方が下手なのでわかり難いかもしれませんが、画像の中央に小さな滝が見えると思います。

八王子城は秀吉の小田原征伐の際に激戦の末落城した山城として有名ですが、落城の際、城主である北条氏照の正室や城内の女性が自刃し身を投げたと伝わるのが、この「御主殿の滝」です。

落城の際は、その女性たちの血で三日三晩この御主殿の滝が赤く染まったそうなのですが・・・

でも、よく見てください。

中央に見える滝は撮影ポイントから10mも離れていないのですが、こんなチョロチョロとしか流れていないような小さな滝に身を投げますかね?

そう思って地図を見てみると、八王子城跡の下も圏央道のトンネルがぶち抜いていました。

おそらく戦国時代は水量の豊富な立派な滝があったのだと思います。

しかし、圏央道のトンネルが掘られたために本来流れているはずの水がトンネルの方に流れてしまい、このようなとても「滝」といえない寂しい状態になってしまったのでしょう。

ちなみに、この写真を撮影した日も朝から2日連続でジャジャ降りの雨でしたので、前日からの雨の量や周辺の山の規模を考えると、濁流とはいえないまでもそれなりの水量があってよいはずです。

南アルプスでは水涸れしないの?

このように、山の下にトンネルを掘るということは、その地表を流れる川の水量に大きな影響を与える可能性があります。

川や沢の水量が変わるということは、川や沢以外の人間が利用しないような小さな湧水や清水も涸れてしまう可能性があるということです。

そのような水場が涸れてしまったら、その周辺の草木のみならずその水場を利用する小動物にも影響が出るはずで、そうなれば生態系が大きく崩れてしまう可能性もあるのではないでしょうか。

国や自治体やJRは流出した湧水をすべて上流に汲み上げるなどと言いますが、それは川の水量を確保できるだけに過ぎないのであって、湧水や清水の水枯れを防ぐことはできないのです。

おそらく、「掘る」と決まったのであれば、もう後戻りはできないのでしょうが、本当に環境には影響が無いのでしょうか?

南アルプストンネルが完成するのは2025年らしいですが、このような高尾山周辺の沢や川の姿を実際に見てみると、10年後に今ある南アルプスと同様の南アルプスがそこに存続し続けているとは到底思えません。